営業サーキットでスロットカーをやっていて、誰もが一度は体験する悲しい現実。どんなサーキットであっても、いつ無くなるかは誰にも分からない。
だから一刻も早くそのコースで気持ちよく走れる車両を探し当てれば、無くなる日まで1日でも長く楽しめると思っている。サーキットに合わせて車のほうを大改造してしまうのも、また楽しみ方の一つの方向性だろう。
私は逆に、サーキットが閉店するのをたくさん見てきたせいで、どこか一つのサーキットに依存した仕様に改造するのはやめた。無茶な改造をせず、もう随分ながいこと、それぞれのスロットカーを実車なりの特性に合わせて作り分けているだけだ。ただのクルマ好きだから、レースに出ないのだったら改造そのものには全く興味などない。
たくさん車を持ち込んでは、セッティングを変えたりタイヤを変えたりして色々と試してみる。1台1台丹念に、ある程度走り込まないと本当に合う合わないは分からないので、どうしても時間がかかるものだ。
コースのレイアウトや雰囲気によって、走らせたいと思う車や似合う車はそれぞれ違ってくる。まず車両選びに始まって、選んだ車によってはボディやシャーシ、駆動系のレストアが必要なことも多々ある。
タイヤチョイスや通販パーツの待ち日数、必要ならモーター変更など、とにかく新しいサーキットに行き始めると、大体ラインナップが固定化できるまで最初の約8週間ほどはそういう感じで忙しくも楽しい日々を過ごすことになる。
いま世界中で大人気のNSRは確かに速くて面白い体験だったが、忘れ去られたような過去の遺物もまた楽しいものだ。つい最近まではこんなものを引っ張り出してきて、NINCOコースで走らせて遊んでいた。
速さに関してはNSRと正反対だが、NINCOの古いバネサス車などはその動きが実に微笑ましい。
クリオなんかだと、アクセルONでテールをピョコピョコ持ち上げるのが可愛い動きだ。911は磁石を抜いただけでウエイトなしでもよく走るが、共振音と挙動がオモチャっぽすぎたので、やはり少しウエイトを追加して音と動きを落ち着かせたほうがそれらしいと思う。
ウエイトでの重心調整が走りに効くのは確かだが、副次的には鉛シートによる制振効果も無視できない気がする。完成ミニカーを走らせて遊んでいるので1/24のような車づくりの苦労がないぶん、大人のミニカー遊びなら走りの「らしさ感」とか「ゴッコ感」ぐらいは、こだわって手を掛けたいものだ。共通シャーシで競技重視の24と違い、私は誰が何と言おうと32は「ゴッコ」だと思っている。
白いポルシェの方はラリーカーらしく車高を数ミリ上げた。それでも赤いノ-マル車高と一緒に走れなくなるほどの、神経質なハンドリング変化はないように思う。
そこそこ古め設計のNINCOバネ車は、優しさすら感じるような、ほっとするようなユルさがたまらない美点だ。